朝焼け経済成長を享受してきた新興国および資源国にとって、米中貿易摩擦はまさに青天の霹靂ともいえるリスクだ。2020年、各国の視界は開けるのか Photo:PIXTA

足元では米中摩擦激化が
新興国経済の足を引っ張る

 近年のグローバル化の進展に伴う世界的なサプライチェーンの構築を背景に、経済成長を享受してきた新興国および資源国にとって、米トランプ政権による保護主義的な通商政策やそれを受けた米中摩擦の激化の動き、保護主義姿勢が世界的に広がりをみせていることは逆風に他ならない。

 その意味では、2019年は新興国および資源国経済にとって「青天のへきれき」とも呼べる状況にあったと考えられる。事実、このところの世界貿易の動きをみると、18年末をピークに頭打ちとなり、足元では前年を下回る水準で推移するなど弱含む展開が続いており、世界経済の足を引っ張る事態を招いている。

 さらに、経済構造の上で輸出依存度が相対的に高い新興国や資源国にとっては、直近の状況は景気の足を引っ張るものとなっていて、多くの新興国や資源国で景気の減速感が強まっている。

 こうした状態は、近年のグローバル化の進展を追い風に生産拠点の多角化を進めてきた製造業の企業マインドの重しとなり、企業部門による設備投資意欲を下押しするなど先行きの景気に対する悪材料となることが懸念されてきた。

 一方、19年にFRB(米連邦準備制度理事会)は金融政策を「ハト派」方向にシフトさせるとともに、その後は「予防的利下げ」に動くなど姿勢を大きく転換させた。

 18年のFRBによる金融政策の正常化に向けた取り組みは世界的なマネーの米国回帰につながった。加えて、トルコの通貨リラの暴落を契機とするいわゆる「トルコ・ショック」を受けた国際金融市場の動揺は新興国からの資金流出圧力を高めた。

 しかし、FRBによる姿勢転換などによる先進国の長期金利低下を受けて、国際金融市場ではより高い収益を求めるマネーの動きが活発化し、新興国に資金が回帰する動きも生まれた。