「私が買い取った」と本部社員が振る舞うビール
売価を下げただけで実は加盟店の負担に

 不審に思ったオーナーが問いただしたところ、SVは、「じゃあ自分で発注作業をしてくださいよ。どうせ自分でできないんでしょう?」と言い放ったという。その後のオーナーとのやり取りで、SVは自ら発注した商品を「自分で買い取る」と宣言したが、実際には買い取っていなかった可能性が高く、その後も加盟店に負担を付け回していた。

 このSVはしばしば、春や秋に出される季節限定販売のビールや、アイスクリーム、ボジョレーヌーボーのワインなどを、「私が買い取ったものですから」と言いながら従業員に配ることがあった。

 ところが19年の暮れ、店舗奥の事務所に、オーナー夫婦が注文した覚えのない定価280円のアイスクリームを、140円に値下げする「売価変更伝票」が見つかった。日付は17年12月6日で、無断発注を繰り返していたこのSVと営業所長の印がある。

青色伝票本来、見切り販売をする際に加盟店から本部に提出する「売価変更伝票」。店の印も、オーナーが知らない間に押されていたとみられる 拡大画像表示

 売価変更伝票とは、販売期限の近づいた食品を加盟店のオーナー判断で値下げして販売する、いわゆる「見切り販売」をする際に、その商品名と変更前後の価格を記入して本部に提出するためのものだ。紙が水色なので「青色伝票」と呼ばれる。

 ところが、このオーナーは見切り販売をした覚えがなかった。それどころか、青色伝票の存在すら教えられていない。値下げすれば多少は売れやすくなるだろうが、売れ残れば原価の大半が加盟店負担となる。SV自身が個人で買い取る“自爆営業”と異なり、結局は加盟店に負担を強いていたわけだ。