待望の新刊、『OPENNESS 職場の「空気」が結果を決める』が発売5日目に重版し、3万部を突破。著作の合計部数も30万部を超えた北野唯我氏。いま、人材マーケット最注目の論客であり、実務家だ。
その北野氏が、今回選んだテーマは、「組織」。「ウチの会社、何かがおかしい?」という誰もが一度は抱いたことがある疑問を科学的、構造的に分析し、鮮やかに答えを出している。
なぜ、あなたの職場は今日も息苦しいのか。具体的に、何をすれば「オープネスが高い」組織がつくれるのか。明日、少しでも楽しく出社するために、一人ひとりができることは何か。本連載では、これらの疑問について、独自の理論とデータから解説する。
利益が出なくなった組織は、まずオープネスが悪化する
前回の記事で、オープネスは、「組織のカナリア」としての役割=危機を察知する機能を果たすと述べました。言い換えれば、最初に悪化しやすいのはオープネスなのです。
衰退フェーズの企業で働いたことがある人はイメージしやすいと思いますが、たとえば事業が悪くなり、利益が出なくなった組織というのは、往々にしてリーダーや経営者が、情報を隠すようになります。具体的に言うならば、必要以上に経営者が“いいこと”しか言わなくなったり、悪い情報はさらっと表面的にしか触れなくなったりします。
赤字を出している事業や巨額の投資に対して、しっかり説明がされないまま、なんとなくその事業が進んでいく。利益が出ているのか、それとも出ていないのかもよくわからない。従業員への“情報開放性”が著しく下がるのです。
たとえば、不正会計問題の例をイメージするとわかりやすいでしょう。事業が悪化し、利益が出せなくなると、人々は内向きになり、逆にポジティブな情報しか発信しなくなります。なぜなら、一度重ねた嘘の情報を隠すためには、さらに嘘の情報を重ねるしかないし、そもそもネガティブな事実を出すことは社内の雰囲気で許されないからです。もしネガティブな事実を発信しようものなら、自分の椅子(仕事や役職)が危なくなってしまいます。
こうして情報を隠蔽することは、組織の風土になり、正確な情報は経営陣の中でもごく一部の者だけが掌握する状態になります。現場は偽りの情報だけを握らされ、なんとなく靄の中で仕事を進めることを余儀なくされていきます。
リーダーの「白い嘘」が負のスパイラルを生む
なぜ、オープネスが、最初に変化するのか。それは、「リーダーの心の弱さ」に強く起因しているためです。
イメージしてみてください。
たとえば、あなたが今、100人の部下をもつリーダーだとします。担当する事業の業績が悪くなっている。あるいは、ある部下が不正を働いた。そこであなたは迷います。この事実をありのまま、組織やチーム全体に言うべきか、言うべきではないか?
実際、とても難しい問題です。本来なら、きちんと事実は伝えたほうがいい。しかし、我々の心は弱い。そこで、あるアイデアを思いつきます。
あえて言わないーー。
あなたはこう考えます。
「今、会社の状態が悪いから、これ以上ネガティブな情報を共有すると士気に関わる」
「嘘をついているわけではなく、言わないほうがみんなのためになる」
「これは仕方ないのだ」と。
つまり、“白い嘘”という選択肢が生まれるのです。