日本の上司には、もはや若手の育成を期待しないほうがいい理由企業の上司たちは大変難しい状況に置かれています Photo:PIXTA

「正解」を持てなくなった
管理職の憂うつ

 大企業の管理職は大変だ。やれコンプライアンスだ、やれハラスメント対策だ、やれ時短だ、働き方改革だ……と配慮すべきことが年を追うごとに増えている。加えて、データ分析、AI、英語コミュニケーションなど、ビジネスのツールや常識も変わっていく。

 こうした組織の前提や環境の変化からか、旧来のパワハラ問題とは逆に、今は管理職自身が萎縮してしまっている。会社からの指示を加工せずそのまま下に流したり、何も決めず、問題があっても指摘せず、ただの連絡係になってしまっていたりという話をあちらこちらで聞く。どうもそのような風潮は加速しているようだ(あくまで体感レベルの話だが)。

 冷静に状況を振り返るに、大企業の管理職というのは大変難しい状況に置かれている。

(1)経験が役に立たない

 過去のセオリー、自分の成功体験や経験則がほとんど通用しない時代になった。近頃のCMでは「足で稼ぐのが営業」とのたまう先輩社員が“OLD営業”だと切り捨てられる姿が滑稽だったが、ある意味それは真実である。

 デジタル化によりツールが変わって、訪問件数を稼いでその中から顧客候補を見つけるやり方は明らかに効率が悪い。相手の企業の状況を調べることもなく、ただやみくもにたくさん訪問しただけでは意味がないのだ。