白い嘘の原因は「人の心の弱さ」

 白い嘘とは、黒い嘘との対比の言葉で、悪意がなく誰かを傷つけないようにと思ってつく嘘のことを指します。「言い訳」がしやすい嘘です。

 一方で、黒い嘘とは、明確に誰かを傷つけるためにつく嘘を指します。普通、白い嘘のほうが人はつきやすいのです。

 しかし、トップやリーダーが白い嘘を一度つき始めると、組織の常習となり、強烈な“事なかれ主義”を生み始めます。誰も本当の厳しい事実は言わずに、なあなあで物事が進み始め、むしろ本当のことを言う人は煙たがられます。

 そして、その空白を埋めるかのように、ポジティブな情報を過度に宣伝する人が出始め、矛盾を理解した中間層から以前の記事でも触れた「戦略わかったふりおじさん」が生まれるようになます。社内に圧倒的批評家が生まれ始め、組織のオープネス(情報開放性や自己開示性)は著しく下がります。

 このとき、現場の不信感はピークを迎えます。情報は、ポジティブな面だけがやたらと誇張され、戦略が正しく伝わる以上に、ねじ曲げられた情報が伝わっている印象を受けます。この不信感は経験した人はわかりやすいと思いますが、もしそうした経験がないなら、ポジティブな情報しか言わない独裁国家の国営放送を見たときの、強烈な違和感を想像してもらえるとわかりやすいと思います。