大船に一人で行ったから、世界に到達できた

 中学生になって熱心にゲームセンターに通い始めたころ、地元横浜・金沢文庫の店舗が僕のホームでした。ゲーム友達と毎日そこで対戦していました。腕前は同じくらいなので勝ったり負けたりの関係です。最初は通用していた「飛んで、キックして、どうしたぁ!」のラッシュも、それ一辺倒では対処されるようになっていました。お互いに勝つための工夫をして、それをぶつけ合う。まあまあ対戦らしくなって、格闘ゲームの楽しさもわかってきた時期でした。

 その時期に「大船のゲームセンターは強い人が多いらしい」と噂が流れてきました。当時のプレイヤーに関する情報は口コミが主体で、それもあまり正確なものではありません。面倒だしムダ足になる可能性も高いので、周囲の友達は遠征に消極的でした。

 結局、僕は週末に一人でそのお店に行って対戦しました。ちょっぴり自信はあったものの、結果は惨敗でした。「飛んで、キックして、どうしたぁ!」はもちろん、友達との対戦で考えた工夫も通じない。勝てなかったことを通して、格闘ゲームの世界の広さを垣間見た。僕にとってそんな経験でもありました。

 それから、たまに大船のお店に行って対戦するようになりました。地元の友達は来ないので、たいていは一人です。勝てないなりに手応えを感じたり、経験したことを地元に持ち帰って対戦に活かしました。「遠征」を続けるうちにいつの間にか地元では負けなくなっていました。当時の実力や格闘ゲームの理解にそれほどの差があったとは思えません。地元のライバルたちは自分のフィールドに留まってしまったことで、貴重な経験を積む機会を失ってしまったのです。

 その後も新たなロケーションの話を聞くと、わざわざ出かけて行くことを僕は続けました。地域も神奈川から都内中心に移っていき、気がつけば都内の一番強いとされる人たちが集まる新宿のゲームセンターで対戦をするようになりました。初めてアメリカに行ったのは高校生のころです。強いプレイヤーは世界中にいる。そんな当たり前のことを思い知った経験でした。