先行きが不透明なコロナ渦。変化に対応すべきなのはわかっているが、具体的にどうすればいいのか?
そんな人に読んでほしいのが、東大卒プロゲーマーときどさんの著書『世界一のプロゲーマーがやっている 努力2.0』だ。本書では、格闘ゲームの環境の変化によって、全く勝てなくなったときどさんのV字回復の軌跡を紹介。「圧倒的に変化が激しい」eスポーツの世界で戦うために必要なことを突き詰めていくと、ビジネスの世界でも応用できるエッセンスが見えてきた。

「情熱だけで仕事をする人」が意外と続かない納得の理由Photo: Adobe Stock

世界一になった努力のやり方

 今回は僕が実践する「努力2・0」の6つの法則について、基本となる考え方を説明したいと思います。いくら好きなことでも、思いが強くても、がむしゃらにやるのは逆効果です。自分でも気づかないうちに「努力1・0」をやってしまっていないか。チェックしながら読んでみてください。

【①反復の法則】
努力1.0 勝ちにこだわる→努力2.0 「負け」の中に答えがある

 何かを成し遂げるためには反復することが重要。反復なくして成果なし。これはどんなときでも変わらぬ真理です。ただし、僕の考える努力は、この「反復の方法」が普通と違っています。

 計画通りコツコツ同じことを繰り返すのが定石ですが、僕は、そもそも計画にはこだわりません。eスポーツの世界は変化が激しすぎて、きちんとした計画を立てても対応しきれないからです。

 とりあえずやってみる。試行回数をとにかく多くして結果を得る。正解はどこにもないので、常に「仮説」と「検証」を繰り返し続けます。

 重要なのは、失敗しても全然気にせず、むしろ喜ぶこと。失敗は、今自分がやっていることが正しいか否か、どちらの方向に進むべきかを明確に教えてくれます。

【②環境の法則】
努力1.0 一人でやる→努力2.0 ライバルは「敵ではない」

 誰と、どんな環境で努力するかで結果は大きく変わります。ライバルと情報を共有したり、手の内を明かしたりすると勝てなくなるのではないか。僕もかつてはそう思っていました。しかし、その考え方は間違いです。

 毎日、ライバルと同じ時間に、本番さながらの対戦をする。そのことで、お互いの力が高まり、結果的に自分も相手もレベルアップします。相手の力を使わせてもらうことで、お互いに強くなれる。ライバルは敵でもなければ仲良しグループでもない。切磋琢磨する「同志」なのです。

【③メンタルの法則】
努力1.0 情熱だけで乗り切る→努力2.0 心に「負荷をかけない」

 僕にとって、ゲームが好きだという情熱は、全ての基盤であり、パワーの源です。しかし、気持ちだけで何かを成し遂げようとするのは難しい。そのことを、スランプ後の人生で気づかされました。僕にとっての強いメンタル。それは、心に大きな負荷はかけず、無理をしないことで生み出されます。燃え上がる情熱を持ちつつも、冷静に心をメンテナンスする。この両輪があってこそ、努力は実を結ぶのです。

【④継続の法則】
努力1.0 己に打ち勝って続ける→努力2.0 頑張りは「いらない」

 何かを長く続けるのは、面倒くさい。これは、人間なら誰にでもあてはまる絶対的真理です。僕は、「面倒くさがり屋」である才能においては群を抜いている自信があります。だから、幼いころから「自分を変えずに環境を変える」工夫にはかなりこだわってきました。

 僕の努力に、意志力や頑張りは一切関係ありません。面倒くさがりでダメな自分でも、自然に動く仕組み。それが努力2・0の継続する秘訣なのです。

【⑤Whyの法則】
努力1.0 レールにそって生きる→努力2.0 嫌なことは「やらない」

「やってみる」が僕の努力の指針です。でも、その大前提として、「なぜそれをやるのか?」を考えておくことがとても重要です。

 僕はプロゲーマーという道を選ぶ前に、なんとなく大学院に進学して大きな挫折を味わいました。人にはいろいろな事情があります。「好きなことだけしろ」というつもりは毛頭ありません。人生はそんなにシンプルじゃない。ゲームという好きなことを職業にできた僕でもそう思います。ただ、今自分がやろうとしていることを「好きになる」。それが無理なら「受け入れる」ことは、何かを極めるために絶対に必要です。

【⑥地力の法則】
努力1.0 人と比較する→努力2.0 「自分史上最強」になる

 強さとは何か。その定義をどう考えるかで、努力のやり方も変わります。昔、僕が考える強さとは「人と比較して強い」「目先の勝ちを取りにいく」という意味でした。でも、そういう戦い方自体が、トッププレイヤーの間では通用しないことに気づきました。相対的な競争よりも「自分との戦い」をどう制すかの方が、ずっと大切。実際トッププレイヤーたちは皆、「自分はこうありたい」というこだわりを、プレイで表現しています。そこには、ただ「勝つ」だけではない、その先の強さがあるのです。

(※この記事は『世界一のプロゲーマーがやっている 努力2.0』からの抜粋です)