第3章

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 車は青山通りを走っていた。

 総理は身を乗り出して前方を走る車を見た。黒の大型セダンには秘書と国交省の次官、そして警護官が乗っている。さらに背後についてくる車には官房長官と警護官が2人。

 30分前、村津は国交省の次官と一緒にやってきた。

「これから2時間余り、お時間をいただきたいと思います」

「それはムリです。あなたと会った後、すぐに閣議が始まります。すでに閣僚の方々が待っておいでです」

 総理に代わって秘書が答えた。

「現状を考えていただきたい。総理もテレビをご覧になったと思います。かなり緊急を要することになりました」

 総理を見つめる村津の目には、ただごとではない思いがうかがわれる。

 ちょうど総理執務室に来た官房長官と共に、村津に言われるままに外出することになったのだ。こんなことは総理就任以来初めてだった。

 警護官は反対したが、最終的には総理が押しとおしたのだ。車は3台。4名の警護官が同行することで納得させた。

 3台の車は総理官邸を出て六本木に向かった。

 総理と村津の乗った車は他の2台に挟まれるようにして走った。