多くの日本人が気づかない
台湾総統選の重要な意義
台湾の総統選挙と立法院(台湾の国会にあたる議会)選挙が今週末の1月11日に迫っている。2020年は、他にも4月の韓国議会総選挙、11月のアメリカ大統領選挙など、日本にも大きな影響がある外国の選挙が続く。これらの選挙は、米中の貿易問題や北朝鮮問題などを通じて直接影響があるので、日本でも関心が高い。それに対して台湾の選挙は日本人にとって馴染みが薄いが、実は日本の国際関係に大きな影響を与える選挙である。
台湾の現在の与党は中国と距離を置く民進党が総統を輩出し、立法院の過半数を占めている。一方、最大野党国民党は、かつては国共内戦に敗れた蒋介石が日本統治終了後の台湾に拠点を移し、1党独裁政権を続けてきたが、1996年の民主化以降、民進党と国民党が交互に政権を担当している。外交的には「1つの中国」を支持する立場から、対立していた中国政府とも融和的で、中国との連携を強める政策を打ち出してきた。
民進党は中国と対立する立場から、日本やアメリカを後ろ盾とするため日米との関係を重視している。2015年の前回の総統選挙でも、蔡英文総統は安倍首相の地元である山口を訪問し、日本との親密な関係をアピールしたほどだ。
一方、国民党は中国との関係(台湾や中国では両岸関係と呼ぶ)を強化することで、伸長する中国経済の恩恵を台湾にもたらそうとしてきた。長く対立していた中国共産党との関係も修復し、国民党の主席が北京を訪問するなど、中国共産党との友好関係を特徴としている。
一般に台湾は親日で、日本文化が好きだという印象がある。もちろん、日本との友好な関係を望む台湾人は多いが、中国との関係を重視する人たちは必ずしも日本寄りとはいえない。
2012年には、尖閣諸島問題で日本に抗議するため、台湾の漁船団が尖閣諸島の日本領海に侵入する事件があった。台湾漁船団の燃料費を補助したのが台湾の製菓企業の旺旺(ワンワン)グループと言われている。旺旺グループは台湾での米菓業を足がかりに中国に進出し、中国においても総合食品の巨大企業に成長している。