複数の目線で見て
ワンチームで立ち向かう

 治療を“全面的にバックアップする”際、重視しているのは「複数の目線で見て、見たことをチーム全体で共有する」ことだ。

「僕たち医者には、医者の目線でしか見られないことがありますが、逆に、僕たちには見えないこともあります。患者さんも、医者にはそこまで話さなくてもいいとか、大したことないので話さないということもある。でも、医学的には大したことなくとも、その患者さんにとってはすごく悩みの深いことであったり、生活の質を下げる事情が隠れたりもしているので、聞き出したり、気付いて拾い上げ、解決することは大切です。そこを一緒に解決していかないことには、よりよい時間を過ごしていただくことはできませんからね。支持療法は、治療に関わることがメインではありますが、生活の質も大事にします。だから看護師や薬剤師など、違う視点・目線で見ることが絶対必要です」

 安井先生たちは、家族背景や仕事内容まで、実に事細かく見て、サポートする。全体がワンチームになって、同じ目的に立ち向かっていくのだ。

「その人らしい時間を過ごしていただくには、その人のことを分からないといけないじゃないですか。抗がん剤治療の場合、通院時は、自分で車を運転して来てはいけないということも当然あります。ですが、車で送迎してくれる家族がいる人もいれば、一人きりで暮らしている患者さんも沢山います。仕事も、いろいろな立場の方がいて、残された時間で、やっておかなくてはならいことがあるのに、ご本人がまだ十分時間はあると思っていると、やるべきことを後回しにしてしまうかもしれないので、そこはきちっとアドバイスしながら治療を進める。経験則から来る僕らの推定値と患者さんのなかのギャップがある場合には埋めてあげなければならないし、手先をよく使う、細かい作業をしなければならない患者さんの場合は、なるべくしびれが出ないようにしてあげないといけない。

 治療で治せる病気なら、たぶんそこまでしなくてもいいのかもしれませんが」

 患者一人ひとりに合わせた「一番いい医療」の追求には終わりがない。安井先生はこれからも、悔しさに涙を流しながら、前進していくのだろう。

◎安井博史(やすい・ひろふみ)
静岡県立静岡がんセンター副院長(支持療法センター/緩和ケアセンター)/消化器内科部長。1997年滋賀医科大学医学部卒業。滋賀医大付属病院第二内科(消化器・血液内科)入局。2004年静岡県立静岡がんセンター消化器内科レジデント。07年静岡県立静岡がんセンター消化器内科医長。10年静岡県立静岡がんセンター消化器内科部長。13年静岡県立静岡がんセンター副院長兼消化器内科部長、治験管理室長。15年緩和ケアセンター長兼任。16年より現職。専門:消化器がんにおける化学療法