静岡がんセンターの外観静岡がんセンターの外観 Photo by Hiromi Kihara

抗がん剤治療といえば、患者の体質や薬剤によって差はあるが、つらい副作用が伴うことが多い。抗がん剤による副作用は総じて「仕方がない」ものとされ、患者側に我慢が強いられていた傾向があるが、静岡がんセンターは2002年の開院当初より、病気からくる症状や治療に伴う副作用の治療・予防やケアを行う「支持療法」を「抗がん治療」「緩和ケア」に並ぶ3大治療方針の1つに掲げて実践してきた。その現場を取材した。(医療ジャーナリスト 木原洋美)

支持療法を始めた
70代・会社経営者の場合

(つらくて苦しい治療が始まる。もう働くのはムリだろうから、会社は畳もう)

 4年前、ステージ4の胃がんと診断されたとき、Hさん(70代・男性)は覚悟した。というのも母親兄弟全員をがんで亡くしていたからだ。

「今の医療レベルとはぜんぜん違う時代でしたけどね。全員を最後まで看取ったので、どういう経過をたどって、どういう死に方をするのかは学習済みでした」

 がん発見のきっかけは、自覚症状からだった。