失敗の責任を「個人」に押しつけようとするから、「失敗したらどうしよう」「失敗したくない」と動けなくなるのです。

 ならば、チャレンジングな案件における責任の所在を「個人」ではなく「組織」に置くのです。

「個人」で立ち向かうから、判断を誤る

 ある自動車メーカーは、シビアな交渉を効率よく進めるために、営業マンとその上司、開発チームを交えて定期的に、これから営業がアタックする案件について「呑める条件の上限・下限、納期等」の情報交換をしています。そして交渉当日には、条件の幅を超えそうな場合には電話のやりとりで迅速に決断し、なるべく持ち帰らなくてすむ体制を整えています。

 特にB to Bの案件では、会社と会社が複数の取引でつながっていることも多くあります。「この案件ではこちらが不利だが、あの案件ではこちらが有利。持ちつ持たれつだから、少々の無理は呑んでいい」という決断を下すこともあるのです。

 そのような複雑な状況下において、責任を「個人」に預けていては、判断を誤ります。「こんな条件で合意したら本社から叱られる」と断った案件が、実は「持ちつ持たれつの関係維持のために引き受けるべき案件だった。断ったことで両社の関係にひびが入った」なんてこともあるからです。

「責任は俺がとる。好きにやれ」はもはや昔の話です。企業活動で起きた失敗の責任を個人でとる時代は終わりました。あなた自身の裁量で「失敗を許容し、責任をとる」のではなく、チーム(会社)全体で許容できる失敗を判断し、迅速に決断する体制づくりが求められています。

 これこそが「失敗が許されない風潮」を打破するカギです。