1万人を超えるリーダーは、「同じこと」に悩んでいた。
本連載は、1万人を超えるリーダーから寄せられた「悩み」に対し、明確な答えを提示するものだ。
著者は、日本最高峰のビジネススクール「経営アカデミー」で18年以上の登壇実績を誇り、経営者や企業幹部を指導してきた浅井浩一氏。全国で年間100回以上の研修や講演を行い、コンサルタントとしても現場に入り込む
「離職率を抑え、メンタルを病む人をゼロにし、なおかつ目標を達成し続ける」ために、リーダーとともに考え、行動し、悩みの解決を図る。業種・業態を問わず、職場再建率は100%。これまで指導してきたリーダーの数は1万人を超える。近著に『1万人のリーダーが悩んでいること』がある。
【悩み】優しい上司か怖い上司かでいえば、怖い上司のほうが部下も成長すると思っています。私の考え方は古いのでしょうか?
「怖い上司のほうが、部下が成長する」。残念ながら、これは錯覚です。
上司が叱れば部下は100%「すみません! 行動を改めます! がんばります」と返事をします。部下は「一時的に」改心するので、「怖い上司は、部下のよくない部分を正し、どんどん伸ばしている」と錯覚します。
しかし現実には、このような上司では部下は成長しません。部下の改心は「一時的」なものであり、必ず元に戻ります。そこでまた叱られ、「一時的」に改心をする。つまり上司も部下も、同じところで堂々巡りをしているだけなのです。
ならば、優しい上司のほうが成長するのか。必ずしもそうではありません。目標未達が5年、6年と続いても上司から「いいよ、いいよ」と生ぬるく見守られるばかりでは、部下に成長しろと言うほうが難しいでしょう。
期中に厳しかった上司。期末評価の行方は……?
ある不動産会社の課長は、部下を「事実ベース」で厳しくチェックします。期首の面談で部下とともにすり合わせた今期の目標をもとに、「順調かどうか」「順調でないのなら、何がいけないのか。これからどう動けばいいか」を細かく確認し合います。
部下自身が「やる」と言ったことを本当にやっているかどうかも、期中に確認します。客観的に見れば、彼はかなり「細かく、厳しい」上司だといえます。言い訳やごまかしも利きませんから、部下としては「怖さ」も感じているかもしれません。
その証拠が、期末に行う面談。部下はみんな、自己評価で5段階のうち「1」や「2」をつけてきます。「期中、上司にあんなにも細かく指摘され続けた。きっと自分は、やるべきことができていないのだろう」というわけです。
しかし部下の自己評価に反し、その上司の評価には「3」「4」「5」が並びます。部下たちは呆気にとられます。