森嶋は携帯電話をしまい、歩みを速めた。
マンション前に来たとき、森嶋は通りをへだてたコーヒーショップに目をやった。
無意識のうちに理沙の姿を探していたのだ。
マンションに入ろうとしたとき携帯電話が鳴った。
〈森嶋君、今どこにいるの〉
「マンションの前です」
〈じゃ、コーヒーショップで待ってて。いつもの店よ。15分以内に行くから〉
森嶋はコーヒーショップに入り、通りに面したカウンターに座っていた。
かっきり40分後に店の前にタクシーが止まり、理沙が下りてきた。
「出ようとしたときにデスクに呼ばれたの。この前のことをまだ根に持ってるのよ。私が記事一つ、穴を開けたんだから当然だけどね」
それにしても、15分で来られる場所ではなかったのだ。
「大変なことになってますね。でも、僕もどうなるか分かりませんよ。新情報なんてなしです」
「首都移転チーム、あなたの部署でしょ。今後についてはどう考えてるの」
理沙は森嶋を見据えて聞いた。