注目される消費増税後の個人消費
駆け込みと反動は前回より小さい
日本経済は、輸出や製造業の生産活動が低調な一方、内需や非製造業の経済活動が堅調で、全体では力強さを欠きながらも失速は回避されている状況が続いてきた。しかし、日本企業の輸出環境は、半導体部門の世界的な復調など改善の動きが出ている。
懸念されていた米中摩擦の激化に歯止めがかかっているほか、中東情勢の悪化への警戒感もいったん後退しており、楽観は許さないものの、世界経済の先行きに対する不透明感は弱まっている。
こうした中、これまで堅調だった内需を抑制する消費税率引き上げの影響が引き続き注視されている。乗用車販売台数や家電販売額、百貨店、スーパーマーケット、コンビニの売り上げなど各種販売統計をみると、家電は駆け込みと反動が14年4月の税率引き上げ時と同程度となっている一方、スーパー、コンビニでは、今回の方が相対的に規模が小さくなっている。個人消費全体でも、税率引き上げ前の駆け込みと、引き上げ後の反動の動きがみえてきた。
個人消費全体を示すものとして、四半期ベースのGDP統計の個人消費があるが、月次ベースでは内閣府が消費総合指数を公表している。同指数はGDP統計の個人消費の推計に近い方法で算出される。
実質ベースの消費総合指数は、2019年9月に前月比2.3%上昇となったのち、10月は同2.6%低下しており、ある程度の駆け込み需要と、その反動や増税による落ち込みがあったことがわかる(図1参照)。
一方、14年4月の税率引き上げ前後の同指数は、14年3月に同4.1%上昇の後、4月には同7.8%低下となっており、今回の方が、駆け込みや反動などによる落ち込みが小さかったことが確認できる(同)。
19年11月の消費総合指数は本稿執筆時点では未発表だが、各種関連指標から推計すると、前月比で1%強の上昇となったとみられる。同指数は、9月の急増前の8月の水準を上回っていると推測され、個人消費は持ち直しに向かっている(図1参照)。14年4月の消費税率引き上げ時では、4月の落ち込みの後、5月は前月比で上昇したが、急増前の2月の水準を3%以上下回っており、持ち直しの度合いは今回の方が強いと判断できる(同)。