「サイエンスで稼ぐ方法」を教えるのがMBA

山口:一方で、「アート(感性)」で方程式を解くというのは、客観的な事実よりも自分の五感や直感を信じ、社会秩序や法律ではなく自分の道徳観や倫理観、世界観に基づいて判断し、さらには多くの人が好むという一般論ではなく、自分の感性や審美眼を基準に答えを導き出すということです。

これらに当てはまる職業はなんだと思いますか? 

【山口周】MBAの価値が急落し、世界のエリートは今「MFA」を求める

「真」なら五感や匂いに基づいて、どうすれば会社が儲かるのかを直感でアドバイスする職業です。そのひとつが「占い師」。細木数子さんはまさに「アート」の視点で金儲けのアドバイスをしています。成功すれば華々しい活躍ができる職業です。

「善」は聖職者ですね。お坊さんや神父さん、牧師さんなどはここのアドバイスをしているわけです。毎朝、テレビから流れてくる、「おはようモーニング。悪いことの後には必ず良いことがありますよ」というような瀬戸内寂聴さんの声をありがたく聞いている人も多いと思いますが、これはまったく科学的ではなく、瀬戸内寂聴さんの世界観、感性に基づいたアドバイスです。

「美」はわかりやすいと思いますが、アーティストやギャラリストといった職業ですね。

手っ取り早くお金が儲かるのはどちらかと問われれば、圧倒的に「サイエンス」側なわけです。なぜかというと、世の中において、それが価値につながった時代が長く続いていたからです。そして、サイエンスで稼ぐ方法を、エリートが短期間で習得する手段として、MBAが重用されてきたわけです。

(第2回に続きます)

山口 周(やまぐち・しゅう)
1970年東京都生まれ。独立研究者、著作家、パブリックスピーカー。ライプニッツ代表。
慶應義塾大学文学部哲学科、同大学院文学研究科修了。電通、ボストン コンサルティング グループ等で戦略策定、文化政策、組織開発などに従事。
『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』(光文社新書)でビジネス書大賞2018準大賞、HRアワード2018最優秀賞(書籍部門)を受賞。その他の著書に、『劣化するオッサン社会の処方箋』『世界で最もイノベーティブな組織の作り方』『外資系コンサルの知的生産術』『グーグルに勝つ広告モデル』(岡本一郎名義)(以上、光文社新書)、『外資系コンサルのスライド作成術』(東洋経済新報社)、『知的戦闘力を高める 独学の技法』(ダイヤモンド社)、『武器になる哲学』(KADOKAWA)など。神奈川県葉山町に在住。