8万部を超えるベストセラーとなっている山口周氏の『ニュータイプの時代――新時代を生き抜く24の思考・行動様式』。同書にも詳しく書かれているが、山口氏は欧米のニューエリートの間では近年、「正解を出す力」を鍛えるMBA(経営学修士)を取得する人が減り、MFA(美術学修士)を選ぶ人が増えていると指摘する。世界のエリートが今、求める学位「MFA」とは何なのか?(構成:塚本佳子)

この記事は、2019年12月4日に京都造形芸術大学の東京・外苑キャンパスにて開催された、通信制大学院 学際デザイン研究領域MFA開設記念特別講義を再構成したものです。

ビジネスに必要不可欠な「真・善・美」のバランス

山口周(以下、山口):僕が『ニュータイプの時代』などの著書や、こうして講演を通して、いつもみなさんに伝えているのは、ビジネスには「真・善・美」のバランスが大切ということです。

それぞれに役割分担は違っても、突き詰めれば経営者がやっていることも中管理職の人がやっていることも実は同じで、「意思決定」なんですね。スポーツの世界のように瞬間的に勝敗が決まるのではなく、ビジネスの世界では常に意思決定を繰り返しているわけです。

では、どのようなものが「良い意思決定」なのか?

僕は「真・善・美」に則っているのが良い意思決定だと考えます。これらのうちのどれかを踏み外すと、うまくビジネスが回らなくなります。

例えば、「真」だけに則り「善」がなければ、企業価値は上がっても世の中からは袋叩きにあってしまう。逆に「善」だけに則り「真」がなければ、会社の利益には繋がらない。あるいは「真」と「善」に則っていても、「美」がなければ、人の心を打つことはできません。

会社が潤い(真)、世の中のためになり(善)、かつ人の心を打つもの(美)、それらの要素が満たされて、はじめて正しいビジネスと言えるのだと僕は思います。

昨今、欧米ではMBA(経営学修士)に代わってMFAよりも、MFA(美術学修士)という学位を取得しようとする人が増えているのも、ビジネスの世界において「真・善・美」のバランスが求められつつあることの証左なのでしょう。

この3つの要素が同時に満たされる答えを導き出すには、加減連立方という方程式を解くことが求められるのですが、さて、みなさんはこの解を「サイエンス(理性)」で解きますか? あるいは「アート(感性)」で解きますか? この選択で、今後のビジネスセンスが問われます。