韓国や台湾の産業が
中国に吸い取られている現実

「優秀な人材が国家にこだわらず、好条件のところで働くのは当然だ」という人もいるかもしれない。その点は筆者もまったく同感だが、問題はこの「ブラックホール」に吸い込まれているのが、韓国だけではないということだ。

 例えば、昨年12月9日に「日本経済新聞」が報じた「中国、台湾人材3000人引き抜き 半導体強化」というニュースがわかりやすい。

 今、台湾では半導体業界を中心に、中国からの人材引き抜きが加速しており、世界市場でも存在感のある台湾積体電路製造(TSMC)の経営幹部から現場の技術者に至るまでが、次々と高待遇をちらつかせられ、大陸へ渡っているという。台湾の経済誌「商業周刊」によれば、その数は3000人にも及ぶという。これだけ多くの優秀な技術者が流出すれば当然、「台湾の強み」は中国へ奪われてしまうというのは説明の必要はないだろう。

〈例えば、台湾が得意としてきた半導体メモリー。20年には中国の国策会社である長〓存儲技術(CXMT、〓の文字は金を三つ三角形に重ねる)、長江存儲科技(長江メモリー・テクノロジーズ)が相次ぎ本格量産を始める見通しで、台湾勢は間もなく中国勢にあっさりと抜き去られる恐れがある〉(日本経済新聞2019年12月9日)

 つまり、中国という「人材ブラックホール」によって、韓国と台湾は国内産業の競争力まで吸い込まれてしまっているというわけだ。韓国と台湾がこれだけ狙われている中で、日本だけがお目こぼしになる、と考えるのは無理がある。

 ご存じのように、三菱電機は、今やすっかり世界で存在感をなくしてしまった「日の丸半導体」の中ではかなり奮闘している方で、代表的なパワー半導体であるIGBTモジュールにおいては世界シェアでトップクラスを誇っている。

 サムスン、SKハイニックス、TSMCの人材が狙われている以上、三菱電機の人材も狙われる可能性は十分すぎるほどあるのだ。