米中貿易協議米中貿易「第1段階合意」文書に署名し、握手する劉鶴副首相とトランプ大統領(1月15日、ワシントン) Photo:The Washington Post/gettyimages

米中貿易協議は第1段階の合意に達した 。合意内容を見る限り、米国の圧勝である。今後、中国が協議において主導権を握れる可能性はあるのか。(久留米大学商学部教授 塚崎公義)

米中貿易協議の第一段階は米国の圧勝

 米中両国が貿易問題に関して、第1段階の合意に達した。中国は「米国製品の輸入を増やす」「知的財産権を保護する」など、貿易戦争前と比べて米国にかなり譲歩しているが、米国は「貿易戦争で引き上げた関税の一部を下げる」だけで、貿易戦争前と比べて中国に譲歩したことは一つもないばかりか、引き上げた関税も多く残ったままである。

 これは、どう考えても米国の一方的な勝利であろう。拙稿「米国は覇権を懸け本気で経済戦争による中国封じ込めを狙っている」には、「米中の全面戦争となれば、米国が圧勝しそうだ」と記したが、現段階まではその通りになっているわけである。

 米国は中国から巨額の輸入をしているので、関税引き上げ合戦によって中国の輸出額が減れば中国経済への打撃は大きくなる。だが、中国の米国からの輸入はそれほど大きくないので、米国は輸出額が減っても打撃は限定的である。中国は貿易戦争によってそれが身にしみたので、妥協せざるを得なかったのであろう。

 現在は中国が過剰債務問題を抱え、その対応で景気に悪影響が出ているタイミングでもあり、対米輸出額の減少とのダブルパンチで国内景気が大きな痛手を被りつつあることも中国が譲歩せざるを得なかった一因かもしれない。

トランプ大統領が勝った次は「議会」の出番

 ところで、ケンカには2種類ある。1つは、ガキ大将が弱虫に対して「オモチャをよこさないと殴るぞ」と脅すような喧嘩。ガキ大将は、そうは言いながらも殴ると自分の手が痛くなるので、殴らずにオモチャを手に入れる方法を考えているはずだ。これは、トランプ大統領の取る手法である。