秋山 信頼感を持てるようなインターフェースがあって、それを通じて確認ができれば、本当に保証されたとユーザーが納得できるということですね。

高木 はい。ブロックチェーンの技術のまわりには、使い勝手のよいアプリなど、多くの人がその信頼度を確認できるようなエコシステムが必要になってくるでしょう。世の中に広まって、みんながブロックチェーンの優れた機能を使えるようになるためには、ブロックチェーンそれ一つの技術だけでは完璧ではありません。
 
秋山 インターネットのように、普通の人が使ってメリットを享受できて、はじめて定着するんですね。その意味で、私がおもしろいと思ったのは、電力取引にブロックチェーンを使う事例です。電力の自由化でどこから電力を買うかを自由に決められる時代においては、その電力が何由来なのかを知ったうえで買うことができるのは、ユーザーにとってメリットになると思います。例えば、太陽光や風力など、化石燃料を使わない電力を使いたいと思う人は、ブロックチェーンでその電力が何由来かという情報が保証されていれば、それを選んで買うことができますね。

高木 デジタルグリッドという会社で取り組んでいる仕組みですが、電力にIDをつけてどこで発電されたものか仮想的に分かる仕組みを作ることで、ユーザー間で直接売買する、まさにブロックチェーンの長所を生かした使い方です。

 もともと風力などのエコ発電で生まれる電力は、一箇所で大量の電力を一度に生み出せるわけではなかったので、やりとりも細々したものになり、それを融通することが課題でした。その意味でも、ブロックチェーンの分散的な価値観となじむ使い方なのです。

新たな価値体系が
組織を変える

秋山 地域通貨も、貨幣を超えた可能性を感じさせる事例だと思います。
 
高木 そうですね。2016年には会津大学、ベンチャー企業、東京大学、GLOCOM国際大学などが、共同研究で地域通貨「萌貨(モエカ)」の実証実験を行いました。サブカルチャーイベント「福島Moe祭」において、当日会場内のみで利用できる「萌貨」をスマホ専用アプリで取引しました。来場者同士がイベントの宣伝をしたり、会場のゴミ拾いや掃除をしたりすると「モエ」がたまり、ためた「モエ」は、飲食物やグッズが当たる福引チケットとして使用できるというものです。

秋山 ちょっとした親切やいいなと思ったことに、普通のお金ではない価値を与えることができるのがいいですね。

高木 日本円はすでに価値基準が決まった通貨ですが、それとはレイヤーの違う価値基準をつくり、従来のお金では評価されないことを積極的に評価できる仕組みです。