秋山 今の我々が使っているシステムや多くの組織は、中央集権的なピラミッド組織。ブロックチェーンが生きるのは、それとは全く違うリゾーム状の民主的な組織なんですね。
高木 インターネットが発達し、デジタル化が進むと、一部のプラットフォーマーに情報が集中します。そのプラットフォーマーが中央集権的に権限を持ってしまうと、それを使っている人の情報はすべてプラットフォーマーに握られてしまってよくない。そこで、例えば通貨の発行権のようなものを自分たちで持てないかと……ブロックチェーンが生まれたもともとの思想もこういうところにありました。
学歴詐称対策、電力取引
広がるブロックチェーンの使い道
秋山 ブロックチェーンというと、ビットコインをイメージするビジネスパーソンも少なくないと思いますが、それだけのための技術ではなく、ほかにもさまざまなことに幅広く使える「機能」を持っていますよね。今どんなものへの活用が、どのくらい進んでいるのでしょうか。
高木 ブロックチェーンの長所として、「共有しても改ざんされない」「価値流通の仕組みを誰でも作れる」「トレーサビリティーを担保できる」という3点があります。そして、これらの特徴を生かすことが期待できる分野として、学歴詐称対策、農作物のトレーサビリティー(安全性、フェアトレード)、アート作品の売買などがあります。
秋山 学歴詐称対策というのはおもしろいですね。
高木 ブロックチェーンで管理すれば、過去からの情報の積み上げがすべて記録として残りますし、ある人がどの大学のどんな課目を履修して、そのテストの結果はどうだったか、ということまでミクロな情報が集積されます。こうしたミクロな情報をみんなで正しいと保証して、共有してすることで、自分なりの卒業証書を作っていくこともできるでしょう。情報が改ざんされていないことを保証する要素技術としてブロックチェーンはとても優れたものです。ここまでミクロな情報ではありませんが、マサチューセッツ工科大学(MIT)でも、卒業証書の管理に使われています。
ただ一方で、信頼は人と人のあいだに生まれる心理的なものでもあります。いくらブロックチェーンの仕組みが堅牢(けんろう)で、みんなでそれを共有しているから大丈夫といっても、それを実感できるような「よりどころ」が必要だということです。