秋山 お金以外の価値基準というと、社内通貨を活用している企業もあるそうですね。面倒な仕事を引き受けてくれたら、社員同士で“サンキューポイント”をやりとりするというような。お金ではなく社内だけで流通する社内通貨で払うことで、ちょっとした善意や通常の業績評価で表せない人の行為に対する感謝の気持ちを、社内通貨という価値として付与することができる。これが機能すれば社内のコミュニケーションが劇的に変わると思いますし、給与とは別の価値体系でその人のよいところを評価できるのは組織開発の観点からも、画期的な意味を持つと思います。
 
高木 これもまた業績評価や給与といった従来の価値とは違う価値体系をつくることができるという例ですね。

秋山 例えば、コールセンターの対応一つ見ても、一件あたりの時間が短くすめば優秀ということになるかもしれませんが、電話をかける側としては「今回の人はすごく説明が丁寧でよかった」とか、「中身はわかったけど嫌な感じだった」とか、評価に差は出てきますね。よかった人に円というお金を払うことはなじまないにしても、ブロックチェーンの仕組みで「いいね」のようなものをつけることができたらおもしろいでしょうね。

高木 新たな価値体系でいうと、フェイスブックが開始する暗号通貨「リブラ」には注目しています。リブラがお金の価値や従来の権威が付与するものとは異なる価値認識を生むと、おもしろくなりそうです。

 ブロックチェーンを使うことで、評価が多様化し、誰でも新たな価値体系をつくることができる。おっしゃるように、コミュニケーションが変わるというところも注目すべき点だと思います。(後編は2月10日に配信予定)