妊婦や乳幼児は
「他人に迷惑をかけている」

 臨月で身重のキンタロー。さんが街を歩いていると、彼女めがけて意図的にぶつかってくる男性が何人もいたというのだ。そんなひどい人間がこの世にいるのかと怒りに震える人も多いかもしれないが、実はこのような被害は、妊婦や乳幼児を育てている母親の間では「あるある」なのだ。

 2017年1月、ベビーシッターマッチングサービスを運営する株式会社キッズラインが、子育て中の女性340人を対象に行った調査では、ベビーカー利用時に「嫌な思いをした」と回答したのは56.8%と半数以上。「邪魔者扱いされた」「舌打ちされた」くらいは当然のことで、中には「ベビーカーを蹴られた」という耳を疑うような被害も報告されている。

 妊娠中に不倫した夫を「奥さんがかわいそう」とボコボコに叩く人がたくさんいる一方で、日本社会では妊娠中の女性や、子育てに苦労する母親を目の敵にして攻撃をする人もたくさんいるのだ。

 なぜこういう矛盾に満ちた現象が起きるのかというと、妊婦や子連れの母親というのは、見方によっては「自分勝手な行動」をとっているように見えるからだ。

 当たり前の話だが、妊婦や子連れの女性の方は周囲と同じように動くことができない。街中でベビーカーなどを押していれば、ほぼ間違いなく人の往来に影響を与えてしまう。意図しなくても周囲に「迷惑」をかけてしまうのだ。

 それが当たり前だろ、と思うかもしれないが、ここで先ほどの調査を思い出してほしい。我々は「他人に迷惑をかけなくとも、個人の勝手な行動が許せない」という国民だ。

 そのような人たちが大量に溢れる世界で、身重の体や泣きわめく乳幼児で、他人に「迷惑」をかけている女性がいたらどうなるか。チッという舌打ちとともに、東出さんや唐田さんに対して湧き上がっているような憎悪が芽生える、という人もいるのではないか。

 みんな迷惑をかけないように、自分勝手な行動を慎んでいるのに、なんでこの女は妊婦や子連れというだけで、こんな自分勝手な行動をするのだ。ふざけるな――。