部屋に入るとまだ7時を回ったところだが半数以上の者が集まっていた。

 部屋の電話が鳴っている。数回の呼び出し音の後、まだ始業時間前であることを告げる録音が流れた。電話が切れると、再び呼び出し音が鳴り始める。

「出るな」

 森嶋が受話器に手を伸ばすと千葉の強い声が飛んだ。

「首都移転の記事についての問い合わせだ。仕事の開始は8時からだ。それまでは放っておいても問題ない」

 森嶋が席に着くと優美子がやってきた。

「村津さんは」

「私は15分ほど前に来たんだけど、もう来てたわ。今は次官のところ。それより、東京経済新聞の記事は理沙さんなの」

 途中から小声になった。

「森嶋が事の経緯を知ってるんじゃないか。なんせ、村津リーダーのお気に入りだ。この記事はなぜ漏れたんだ。首都模型の写真まで載ってる。この写真は携帯で隠れて撮ったものだぜ」

 千葉が森嶋と優美子の間に割って入り、森嶋の前に新聞をおいた。他の者たちも集まってくる。

「なんで俺が知ってると思うんだ。あのとき全員で見たはずだ」

「じゃ俺たちの誰かが隠し撮りしたって言うのか。そんな奴はいなかった」

 千葉は、そうだよな、という風にまわりの者たちを見渡した。

「あの模型は、いつもは長谷川設計事務所にあるんだろ。若い奴も結構いたぜ。だったら──」

「彼らなら、もっとまともな写真が撮れるはずだ」

 森嶋は千葉の言葉をさえぎり、長谷川たちをかばうように言った。