「昨日、総理に首都模型を見せた。きみたちが見たモノ、今日新聞に載ったモノと同じだ。近いうちに首都移転計画が本格的に動き出す。おそらく今日中に国民に対しても正式に発表される」

「今日の新聞発表は政府が関係しているんですか」

「それはない。そうであれば、総理の談話とまともな首都模型の写真で発表するだろう。あの写真はひどい」

「じゃ、純粋に東京経済新聞のスクープということですか。だったら、どうやって――」

「そうだろうな。しかし、タイミングとしては悪くはない。政府の動きが鈍い今、日本の現状を考えればベストに近いものだったかも知れない」

 村津は腕時計を見て、よろしく頼むと言うように右手を上げると、部屋を出ていった。

「今日中に総理による首都移転の発表があると言っていたが、その後はどうなるんだ」

「首都移転法案が作成されて閣議にかけられる。それが通れば、内閣提出法案として衆議院議長に提案され、議長によって相応の委員会に付託される。その委員会で審議を行い、通れば本会議でさらに審議を行う。そして衆院で可決されれば参院に回され、可決されれば成立だ」

「普通の法案と同じじゃないか。そんなものでいいのか。東京が首都でなくなるんだぞ」

「簡単じゃないさ。内閣では通るとしても、その後はかなりな反対が起こるだろうな。衆議院では与野党共にだ。なんせ東京から首都を移すんだ」

 全員が勝手なことを言い合っている。