「後30分で始業時間だ。電話にも出なきゃならない。それまでに対応方法を決めておく」

 黙って若手官僚たちの話を聞いていた遠山が声を上げた。

「たしかにそうだ。俺たちだって、なんと言えばいいか分からない」

「総理の発表を待ってほしい。それだけでいい。それ以上しゃべるとボロが出る」

「総理は本当に発表するんですか」

「村津さんの言葉だ。今日、話し合うんじゃないか。そのために呼ばれた」

「新聞記事の真偽を問われたら」

「同じ答えだ。総理の発表を待ってほしい」

「だったらいっそのこと、電話になんか出なけりゃいいんだ」

「そうはいかないのが公務員だ」

「さあ、戦闘開始3分前だ。8時以後の電話はすぐに取らなきゃ、なに言われるか分からないぞ」

「分かってますよ」

 遠山の合図で、全員がそれぞれのデスクに戻っていった。

 電話は相変わらず鳴り続けそのたびにメッセージが流れている。ほとんどの電話は途中で切られて、そのとたん新しい呼び出し音が始まる。

(つづく)

※本連載の内容は、すべてフィクションです。
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