グーグルの巨大オフィス、地元共存に道開けるかグーグルの新オフィス建設予定エリア Ian Bates for The Wall Street Journal

 【サンノゼ(米カリフォルニア州)】巨大IT(情報技術)企業は米西海岸の交通渋滞や住宅価格高騰を助長してきた。そこで今、ダメージの修復に乗り出している。

 だが、このシリコンバレーの端に位置する都市では、その難しさと複雑さが次々に表面化している。

 アルファベット傘下のグーグルは、当地に600万平方フィート(約56万平方メートル)を超える拠点を建設しようとしている。これはエンパイアステートビルの総床面積の2倍に相当する広さだ。町の中心部を再開発し、古い駅の周辺に数千の住居棟や店舗、公共スペースを設けることも計画されている。実質的にサンノゼを21世紀型の企業城下町に再生するというのがその売りだ。

 一部の住民は景気向上の可能性を歓迎している。だが、近隣の町が消防士や教師不足に悩まされているのを目にし、最悪の事態を警戒する人たちもいる。それらの町では物価高騰でそうした職業の人たちが職場の近くに住めなくなった。ジェントリフィケーション(地域の再開発による高級化)に反対する活動家は、当初の閉ざされた協議に異議を唱え、公のイベントで市長にブーイングを浴びせている。2018年に開かれた市議会では、活動家らが自らをイスに鎖で縛り付け、プロジェクトに抗議。警官がボルトカッターで鎖を切って、彼らを排除した。

 グーグルは3年にわたる予備的協議を経て、現在サンノゼ市当局と交渉中だ。現地の住民団体は、開発住宅の4分の1について市場を下回る相場で販売するよう求めている。また、格差拡大と環境への懸念を理由にグーグルの社用バスの運行にも反対している。

 グーグルは市場価格を下回る住宅を一部建設する意向を示しているが、具体的な数はまだ決まっていない。また、社用バスの中止も約束していない。

 こうした際限ない議論は、地域一帯で繰り返し生じている争いの縮図だ。テクノロジーはシリコンバレーに異例の富をもたらしたが、住宅不足を悪化させ、経済格差を拡大させた。米国第10位の人口を擁するサンノゼは、大企業を受け入れる一方でそのマイナス面を管理できるかという問題に直面している。