このサービスの肝は、「焼きたてのパンを冷凍している」こと。パンスクで届いたパンはすべて冷凍されており、電子レンジで30秒ほど温めるだけで焼きたての食感と香りを楽しめる。同サービスを展開する、パンフォーユーの矢野健太社長は、秘訣をこう語る。

パンフォーユーの矢野健太社長
パンフォーユー矢野健太社長 Photo:Diamond

「私たち独自の冷凍技術をパン屋さんにお伝えし、さらに冷凍パンは価格が通常の約10倍もする特別な袋に入れることで、焼きたての味を十分に密封できるようになっています」

 今年2月からのネスレとの提携をきっかけに、2020年中にパン屋30店以上と取引を行い、パンスクの導入企業数は1000社以上になる見込みだ。そんなパンスクに、先ほどの赤石さんはパンを2年ほど前から卸している。まさに廃業直前、その噂を聞きつけたパンフォーユーの担当者に声をかけられたという。

「月に2~3種類のパンを合計2000個前後卸しています。毎月末には翌月の発注が決まるため、予定が組みやすく、今では作業する日は朝10時からお昼までやって休んで、その後2時くらいから夕方までパンを焼けば、60代後半の私1人でも十分回せるようになりました。規模は昔の10分の1程度ですが、作っては冷凍するので、時間にせかされて作業する必要はありません。

パンフォーユーのパン
パンフォーユーが提供しているパンの例。特別な密封袋に入れることで、電子レンジで1分ほど温めるだけで焼きたてのパンの味が楽しめる Photo:Diamond

 一番うれしかったのは、これまでは時間がなくてできなかったパンの『発酵』の実験ができること。試行錯誤して作ったものを提案して、実際に卸すこともあります」(赤石さん)

 同じく雨笠さんも、もともとお店のファンだったパンフォーユーの担当者に声をかけられ、現在は月に1000個ほどのベーグルをパンスクに卸すようになった。

「これまでは卸をしていなかったのですが、パンスクに卸すようになって売り上げが安定し、日曜日の移動販売も無理をして行う必要がなくなりました。今は気分転換で行く程度で、子どもと過ごす時間が増えています。また、以前は1日20~30個のベーグルを廃棄することもありましたが、これをきっかけに自分の店でも冷凍ベーグルを始めて廃棄はほぼゼロになりました」

 朝早くからさまざまな種類のパンを大量に焼き、その日のうちに売れないものは廃棄されるのが当たり前だったパン業界。確かに他社との競合は激しく、商品を新たに生み出したり、改良したりし続けなければ生き残れない群雄割拠の状況だ。

 しかし、地域住民から求められながらも、人手不足や高齢化、大量の廃棄などの問題で倒産や廃業に追いやられるパン屋には、「冷凍」や新たな技術、アイデアなどを活用しながら、無理なくビジネスを続けられる仕組みが求められている。

(ダイヤモンド編集部 林 恭子)