服について考えるのは、めんどくさい。アイテム選びがめんどくさいし、コーディネートもめんどくさい。そんな男の服選びに対し、書籍『服がめんどい――「いい服」「ダメな服」を1秒で決める』で最短で私服を決める方法を説いた大山旬氏。あたらしい「私服」に対する考え方を提案する。

「ユニフォーム化」という提案

みなさんは服選びが好きでしょうか。

百貨店やショッピングモールを見ると、女性のアパレルショップはたくさんあります。しかし、女性に比べると、男性向けのアパレルショップはとても少ないです。

それを見るだけでも、男性の私服への意識の低さがうかがえます。

一般的な会社員であれば、平日はスーツを着るでしょう。
すると、私服は、週に1~2回しか着ないことになります。つまり、そんなにたくさんのバリエーションなんて必要ありません。
服なんかになるべく頭を使いたくない人も多いでしょう。
そこで、提案したいのが「ユニフォーム化」という方法です。

アップルの創業者であるスティーブ・ジョブズ氏の話は有名です。
黒のタートルネックにリーバイスのジーンズ、足元はニューバランスのスニーカー。メディアを通して見る彼の姿は、いつもこの装いでした。
これこそが、ユニフォーム化の一例です。
他にも、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ氏や、日本ではデザイナー・建築家の佐藤オオキさんもユニフォーム化を実践しているそうです。

私服は「ユニフォーム化」してラクをしようベストコーディネートを作ろう(イラスト:須田浩介)

「ユニフォーム=こだわり」である

ユニフォーム、つまり「制服」というと、おしゃれとは無縁のような響きがあります。
しかし、実はジョブズ氏の黒のタートルネックは、ファッション業界では知らない人はいない、三宅一生さんがデザインを担当しています。
しかも、体のあらゆる部分を採寸しながら、特注で作られたものです。
また、象徴的な丸メガネは、アンティーク眼鏡のエッセンスを凝縮した「ルノア」というブランドのものです。ジョブズ氏の見慣れたスタイルの中にも、こだわりがぎっしりと詰まっています

ザッカーバーグ氏も同じです。
Tシャツ1枚のシンプルなスタイルでも、適当に選んでいるわけではありません。直近の彼の姿を見ると、1枚で数万円を超える、上質なTシャツを選んでいます。

このように、ユニフォームとして選ぶべき服は、何でもいいわけではありません。
最初のアイテム選びだけは、手を抜かずにおこなう必要があります
しかし、最初に1割の面倒をしておくことで、その後、9割のラクをすることができるのです。

「最良の1着」を選ぶ

私の職業はスタイリストですが、最近は少しずつファッションのユニフォーム化を進めています。

たとえばシンプルな白Tシャツを選ぶにも、複数のものをまとめ買いします。実際に数日間、着用してみて、シルエットのバランス、着心地の良さ、洗濯後の変化などを比較します。

ベストな1枚が見つかったら、同じものを複数買います。
色違いなどは、あえて買いません
自分が一番気に入ったものだけを揃えておく。男性はたくさんのバリエーションを楽しみたいというよりも、気に入ったものばかりを着る習性があります。自分にとってのベストな1枚を見つけたら、それだけをしばらく着るのです。

みなさんには、ぜひ、休日用の2~3パターンのベストコーディネートを組んでいただきたいと思います。

アパレル業界にいる人であれば、おそらく服が大好きで仕方なく、何十着、何百着もの服を買いそろえ、流行を追い続けることかと思います。
しかし、世の中の流れは逆です。
ぜひ、定番アイテムの選び方にこだわり、それを制服にしてしまいましょう

[著者]
大山 旬(おおやま・しゅん)
スタイリスト。株式会社SO styling代表取締役
アパレル販売職、転職アドバイザーを経て2009年5月に独立。一般人を対象に3000名以上のファッション改善を行う。主に経営者・専門家に向けたスタイリングアドバイス、およびビジネスにおけるキャリアアップを目的としたスタイリングを得意としている。また、日本最大のファッション学習サイト「メンズファッションスクール」を主宰。大人の男性に向けてファッションの基本をわかりやすく解説し、利用者数は累計1000名を超える。
[絵]
須田浩介(すだ・こうすけ)
1987年生まれ。2008年創形美術学校卒業。卒業後、フランス・パリ国際芸術会館シテデザールに派遣。跡見学園女子大学、創形美術学校、非常勤講師。アクリルガッシュを使用したファッション感のある人物、動植物のイラストレーションを描く。商業施設のキャンペーン、書籍、雑誌挿絵、ポスター等の仕事を手がける。