どんな種類のスキルの習得にも使える「ウルトラ・ラーニング」という勉強法が話題だ。このノウハウを体系化したスコット・H・ヤングは、「入学しないまま、MIT4年分のカリキュラムを1年でマスター」「3ヵ月ごとに外国語を習得」「写実的なデッサンが30日で描けるようになる」などのプロジェクトで知られ、TEDにも複数回登場し、世界の勉強法マニアたちを騒然とさせた。本連載では、このノウハウを初めて書籍化し、ウォール・ストリート・ジャーナル・ベストセラーにもなった話題の新刊『ULTRA LEARNING 超・自習法』の内容から、あらゆるスキルに通用する「究極の学習メソッド」を紹介していく。

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「興奮レベルの最適化」で理想の集中状態を作る

 学習の効果を最大化するためには、どの程度の集中力を保つのが最適なのだろうか?

 ここでは、「興奮」「作業の複雑さ」という2つの変数に関する興味深い研究を紹介しておこう。

 まず「興奮」だが、これは性的な興奮状態ではなく、自分に活力がみなぎっていたり、意識がはっきりしていたりすると感じる状態を指す。

 眠いときには興奮のレベルは低く、運動しているときには高くなる。この身体的な現象は交感神経が活性化することによって起こり、心拍数の増加、血圧の上昇、瞳孔の拡大、発汗など、しばしば同時に体に発生する一連の反応からなる。

 精神面においては、興奮は集中力に影響する。人は興奮のレベルが高くなると覚醒状態になり、狭い範囲での集中が高まるが、この状態は不安定であることも多い。

 これは比較的単純な作業や、小さなターゲットに集中する作業に非常に適している。

 アスリートはダーツを投げたり、バスケットボールをシュートしたりするために、この種の集中力を必要とする。

 こうした場面では、行われる作業はかなり単純だが、適切に行うために集中力が必要になるのだ。しかし、過度に興奮すると、集中力が落ち始める。

 気が散りやすくなり、一定の場所に集中を維持することが難しくなるのだ。コーヒーを飲みすぎていらいらしたことのある人は、この状態が仕事にどう影響するか知っているだろう。

 数学の問題を解いたり、エッセイを書いたりといったより複雑な作業では、集中力を緩めた方が効果的だ。そこでは意識を向ける対象がより広く、より分散していることが多い。

 そうした場合、直面している問題を解決するために、さまざまなインプットやアイデアを考慮する必要がある。

 複雑な数学の問題を解こうとしたり、愛を捧げる詩を書こうとしたりする場合は、こうした精神的な穏やかさが必要になる。

 特に、クリエイティブな作業をしていて行き詰まった場合、逆に、集中を止めてしまう方が良いかもしれない。

 問題を考えるのを中断することで意識が広がり、それまで考えもしなかった可能性が頭に浮かんで、それを問題に結びつけることで新たな発見が生まれるかもしれないのだ。

 これは、なぜ「エウレカ!」の瞬間〔エウレカは古代ギリシャ語で「わかった」を意味する言葉で、アルキメデスが複雑な物体の体積を量る方法を思いついた際に叫んだと言われる〕が仕事中ではなく、休憩中や居眠りをしている間に起きるのかの科学的な説明だ。