自分にあった「環境」を見つけよう

 しかし、怠惰が創造性のカギだというわけではない。このようなアプローチが効果を発揮するのは、休んでいても頭の片隅にアイデアが残っているほど、ある問題について長い間集中している場合であることは明らかだ。

 何の作業もせずに創造の分野で天才になれるわけではない。しかし休憩を取ることで、難しい問題に新鮮な見方を持ち込むことができるかもしれない。

 作業の複雑さと興奮の関係は、非常に興味深い。それは、後者の調整が可能だからだ。ある実験では、睡眠不足の被験者と、十分な休息を取った被験者に認知能力を使う課題に取り組んでもらった。

 当然、睡眠不足の被験者の成績は悪かった。しかし面白いのは、周囲に騒音を流した場合、睡眠不足の被験者の方がより成績が良く、休憩を取った被験者は逆に悪くなったという点だ。

 これについて研究者たちは、騒音は被験者の興奮レベルを上げる効果があり、それは興奮していなかった睡眠不足の被験者にとって有利に働いたが、十分な休息を取っていた被験者にとっては興奮のレベルを過度に上げる結果になり、彼らのパフォーマンスの低下を招いたのだと結論づけた。

 これはつまり、理想的な集中状態を維持するためには、興奮のレベルの最適化を検討する必要があることを意味する。

 複雑な作業では興奮レベルが低い方が望ましいため、数学の問題に取り組む場合には、家の静かな部屋が適しているかもしれない。

 逆に、単純作業の場合には、カフェのような騒がしい環境の方が望ましい可能性がある。

 また、先ほどの実験結果は、テストを通じて、自分の集中力にとって最適な環境を見つける必要があることを示している。

 あなたは騒々しいカフェでも複雑な作業に取り組めるかもしれないし、単純作業でも図書館のように静かな環境を必要とするかもしれないのだ。

 (本原稿は、スコット・H・ヤング著『ULTRA LEARNING 超・自習法』〈小林啓倫訳〉からの抜粋です)