「もともと、たいして才能ある野球少年ではなかった」――自身のことをそう振り返る福岡ソフトバンクホークスの思考派サウスポー・和田毅投手。スポーツ万能というわけでもなく、天才的なセンスがあるわけでもない彼が圧倒的な結果を出せている理由は何なのか? 球界きっての「思考派」と言われる和田投手が、その秘訣を余すところなく語った初の単著『だから僕は練習する――天才たちに近づくための挑戦』より、その一部を紹介する。

ソフトバンク和田投手「そもそもランニングなんて必要?」問題を語る写真/繁昌良司

ピッチャーなのに、なぜランニングするのか?

野球界では最近、「ある練習」を行うことの是非が議論になっている。

ピッチャーの練習にランニングは必要なのか?

これまで日本球界では、「走ること」がピッチャーの練習のうちで最も大切な1つに数えられてきた。基礎練習の中心と言ってもいい。
投球フォームのポイントは下半身の安定にある。そのために徹底的に走り込んで強靭な下半身を手に入れる。そんな考え方が元となり、野球界には「ピッチャーは走ってナンボ」とか「ピッチャーは走ることが仕事」なんて言葉があるほどだ。

ところが最近、練習におけるランニングの効果の有無が取り沙汰されるようになり、「ピッチャーにとって、絶対に必要な練習メニューではないのでは?」との声も大きくなっている。

「科学的な根拠がなく時代遅れ」
「下半身を鍛えるためならば、もっと効果的なトレーニング方法がほかにもある」

これらがランニング否定派・疑問派が唱える主な理由だ。