1996年度にはキャッシュ・コンバージョン・サイクルが70日を超えていたのです。

 スティーブ・ジョブズ氏がアップルの最高経営責任者に復帰した後、いち早くキャッシュ・コンバージョン・サイクルの問題に気付き、その改善に乗り出したのです。

 キャッシュ・コンバージョン・サイクル改善の要となる、商品や部品のサプライチェーンマネジメント再構築の陣頭指揮を執ったのが、現在の最高経営責任者のティム・クック氏です。

 世界中に部品の供給網を張り巡らせ、外部企業に生産を委託する方式に切り替えました。これにより、製造中の在庫(仕掛品)を自社で抱える必要がなくなりました。

 そして製品在庫を完全にコントロールし、市場の需要に対する製品の供給量を正確に調整することで、無駄な在庫を圧縮することに成功したのです。

 これにより、短期間でモデルチェンジするアップル製品においても、旧モデルの製品を大量に抱えることがなくなりました。

 結果として2000年以降は安定的にキャッシュ・コンバージョン・サイクルがマイナスを維持し、今日に至っています。

 アップルは、キャッシュ・コンバージョン・サイクルの改善をきっかけに、今日のような超優良企業に成長しているのです。