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――ガソリンスタンド(SS)の販売ネットワークをどう活用するかも大きな課題です。木藤さんはもともと販売畑でしたし、SSへの問題意識は1990年代から持っていたと聞きます。コンビニやカーリースなど業界では試行錯誤しつつも、決定的な事業モデルはまだ開発されていません。CASE(コネクテッド・自動運転・シェアリング・電気自動車)時代に向けて、これまで培ってきた販売ネットワークをどう活かしますか。
SSが重要な社会インフラであることは間違いないのですが、ピーク時(1994年)には6万カ所以上あったものが、いまはおよそ3万カ所に半減しています。これ以上SSが減ると、地域の生活に支障が出かねません。昨年の台風15号の時もそうでしたが、昨今頻発する自然災害時にはSSの存在が見直されたりしますけれど、普段はあって当たり前で、その重要性がなかなか認識されないというのが実状です。
ですから、これ以上SSを減らさないためには何をしたらいいのか、まずはこの切り口で考えています。では、どういうSSが生き残っているかというと、抱えている店舗数など規模の大小は関係ありません。ガスや灯油の配送に強い、車検などの整備工場を持っているなど、地域に密着し、「なくてはならない」商売をしているところが生き残っているのです。
そう考えると全国一律のキャンペーンなどではなく、地域ごとのニーズをしっかりとらえたうえで新しい業態をSSで展開することが大事だと考えています。
たとえば、小回りの利く超小型EVを導入し、地域のモビリティライフを支える拠点にするなどです。消防法の規制があって、日本ではまだEV充電器をSSの中に置くことはできないのですが、ちょっと離れたところになら置くことができます。現在、岐阜県の飛騨市と高山市で実証実験をやっているのですが、ある販売店で超小型EVを7台導入し、誰でもスマホで申し込んで利用できるカーシェアリングサービスを始めました。1回の充電で140~150キロしか走りませんが、近隣エリアだったら十分な距離ですし、スピードも最大45キロまでしか出ないので大きな危険性もない。道路幅が狭く、交通インフラの乏しい過疎地などでのニーズを視野に、テスト中です。
2019年10月には、販売部に「ビジネスデザインセンター」を新設しました。既存インフラであるSSを、時代に合った魅力あるものに変革する新業態や新サービスの開発を進めています。
――高性能の太陽光パネルと開発中のリチウム電池材料を組み合わせれば、SSによるクリーンエネルギーの地域ネットワーク拠点ができるかもしれませんね。
我々のビジネスチャンスは、そこにも多くあると思っています。社内にある商材のコラボレーションはもちろんのこと、ともに力を合わせ新しい事業を創る「共創」と言っている通り、今後はすべて自前主義でやるのではなく、外部の力も借りて進めていく必要があります。我々の持つ商材、研究分野、経営リソースを、どういう形でどんな人たちとコラボレーションして新しい業態やサービスを開発すれば社会に貢献できるのか。それを常に考えて挑戦していきます。