日本政府の観光業強化は
肝心な点が抜けている

 もちろん、「検疫」という特殊な業務は、職員の頭数さえ増やせばいいという単純なものではないだろう。ただ、6倍の人間が訪れるということは、それだけ日本にさまざまなリスクが持ち込まれるということだ。それを水際で食い止めるのならば、やはりそれ相応の体制をつくらねばいけないのは言うまでもない。それがSARS以前から3倍に増やしましたというレベルでいいのか、と言いたのだ。

 このような問題提起がなかなかされないのは、厚労省という役所が、霞が関のなかでも立場が弱いということもあるが、根本的なところでは「観光」というものがナメられていることが大きい。

 外国人観光客を本気でしっかりと受け入れる気がないので、検疫体制もアリバイづくり程度の強化しかしない。そのような意味では、今回の新型コロナの水際対策失敗も、「観光立国」というスローガンを叫びながらも、多言語対応のホームページをつくりますとか、PR動画をつくります、みたいなキラキラ系施策ばかりに税金を投入し、地味な裏方仕事にはあまり力を入れてこなかったことのツケが回ってきたともいえるのだ。

 これまでさんざん議論されてきたように、GAFAのようなハイテク産業もなく、人口がガクンと減って老人だらけの国になる日本には、もはや「観光」を基幹産業としていくしか道はない。好むと好まざるとにかかわらず、進んでいかなければいけない規定路線である。

 新型コロナの流行がおさまっても、これからも未知のウィルスは出てくるはずだ。今回のような体たらくにならないためにも、改めて「観光」という「最強の産業」としっかり向き合っていくべきではないのか。