イタリア、スペイン、オーストリアなども導入を始めているが、ドイツは、米国の制裁関税を恐れて独自課税の導入は検討をしていない。

  ここに来ての問題は、これまでOECDの議論に積極的だった米国のムニューシン財務長官が「新課税権」に対して納税するかどうかは企業が判断する選択制にすべきという提案を昨年12月に行ったことだ。これに対し、欧州諸国は課税の「骨抜き」だと非難している。

 背景には、IT企業のロビー活動の影響やOECDの合意について議会(下院)の承認を得ることが難しいと、米政府が判断していることがあると指摘されている。

 この米国提案にどう対応するかも、新たに今後の課題になった。またインドなど新興国は「新課税権」の拡大を主張している。

 関係国の利害は複雑化し、年末までの合意は容易ではない状況だが、制度作りで合意ができなければ、欧州各国だけでなく、インドやシンガポール、豪州などアジアでも独自課税が広がっていく可能性がある。

 各国独自に導入するDSTは、売り上げにかける間接税のため(直接税と違って)二重課税の調整が難しく、各国がバラバラな税率で導入すれば、国際デジタル取引を大きく混乱させかねない。

 国際課税の本質は各国の利害の調整だが、各国の政治はポピュリズム(大衆迎合的な人気取り政治)やトランプ政策に象徴されるユニラテラリズム(単独行動主義)に陥っており、分断されつつある。

 どの国の政府も、税源確保のためには、増税のように不人気の政策は避け、「新課税権」による増収を期待することになる。

 税制の分野は国際協調を何とか保ってきた数少ない分野だ。これを守っていくことの重要性はこれまでにもまして大きい。

 日本としては、IoTなど産業のデジタル化が加速していく中で、国際貿易が混乱しないよう関係各国の利害を調整し合意形成に努力することが重要だ。

(東京財団政策研究所研究主幹 中央大学法科大学院特任教授 森信茂樹)