第4章

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 総理の発表演説は30分で終わった。

 日本ではこういったスピーチは異例だった。

「マスコミとの会見はやはり中止したほうが賢明かと思われます。あまりに突然なことなので、どのような質問が出るか分かりません。もっと準備してからのほうがいいかと」

 各テレビ局のクルーたちが別室に移った後、官房長官が言った。

「村津君はどう思うかね」

「どうせ、いつかはやらなければならないことです。それなら、早いほうがいいかと。準備不足はマスコミも同様です」

「きみも一緒に出てもらおう。どうせ私は詳しいことには答えられない。政治的な手続きについての質問だけならなんとかなるだろうが、なぜあの模型なのか、これからの具体的な進展などについてはまったくの門外漢だったからな」

「申し訳ありません。このように急激に進むとは思ってもいませんでした」

 総理の皮肉を込めた言葉に村津は答えた。

 総理の発表演説とマスコミとの会見により、日本の首都移転計画はその日のうちに日本はもとより、世界に広まった。

 午後には、東京都側から断固反対の意思表示があった。

 都議会議員127名のうち、125名の署名が届けられたのだ。署名しなかった2名のうち1人は病気入院中であり、もう1人は遅刻したらしい。

 衆参両院の議員たちからも、半数以上の反対の声が上がっていると報告があった。

「この状態で法案を通すことは不可能に近い。私が説明して、納得してもらうしかないな」

「現状を考えると、そんな生易しいことでは収拾しないでしょう」

 官房長官の言葉に総理は考え込んだ。