柔道整復やあん摩マッサージなどの施術所は四半世紀で1.7倍に増加し、倒産件数も過去最高となっている。さらに接骨院(整骨院)の保険請求のほぼ3分の2に不正の疑いがあるとの調査も。特集『接骨・鍼灸・マッサージの深い闇』(全6回)の#1では、業界の窮状や対立構造を追う。
覆面取材で訪れた整骨院で体験した
公的保険「不正請求」の実態
「健保から照会が来たら電話を下さい。調査書の書き方を教えます」――。都内有数の繁華街にある雑居ビル。覆面取材のために「各種保険取り扱い」と看板に書かれた首都圏有数の接骨院(整骨院)チェーン店を訪れた。
「一番痛くなった日はいつですか?」「仕事がデスクワークだと立ち上がるときに痛いですよね?」
担当になった若い施術者に慢性的な腰痛で来院したことを伝えると、慣れた口調でそう誘導され、あっさり公的保険の適用が決まった。健康保険組合から疑われた際には模範回答を教えてくれるというアフターサービス付きだ。
施術は60分間のマッサージ行為で、価格は初診料を含め6000円。店内に掲示された料金表を見ると、保険を使わない場合は1500円ほど高くなる。保険外の場合でも施術内容は全く同じだという。施術中の会話から分かったのは、担当者が保有する国家資格が鍼師・灸師のみであることだ。
支払い後に領収書が出る気配はなく、催促したところ手書きの領収書2枚が渡された。保険適用の「治療費」が980円。残りが「自費診療代」という内訳だ。
業界団体幹部はため息をつく。「どこから指摘すればよいのか分からないほど問題だらけだが、保険の不正請求なのは間違いない」。