2019年10~12月期の実質GDP成長率(前期比年率)
2月17日に公表された昨年10~12月期の実質GDPは前期比年率▲6.3%と、前回2014年の消費増税時に迫るマイナス成長となった。増税により日本経済が大きく下振れている姿が示された。
大幅なマイナス成長の主因は、個人消費の減少である。その減少幅は前期比▲2.9%と、民間エコノミストの事前予想(同▲2.0%)を上回った。これは、大型台風や暖冬など様々なマイナス要因が重なった影響もあるが、増税による消費の冷え込みが事前に予想していた以上に大きかった。
今後の景気を見通す上では、個人消費の動向がカギを握る。足元の消費統計を見ると、増税直後に比べ減少幅が縮小するなど、持ち直しの動きが見られる。1月の景気ウオッチャー調査でも、家計動向関連で、増税後の落ち込みからの回復を指摘するコメントが増えている。人手不足を背景に家計の所得環境も改善しており、前回増税時のように消費の低迷が長期化する可能性は小さい。ただ、家計の痛税感の払拭には時間がかかりそうであり、個人消費が増税前の水準に回復する時期は、従来想定していたより遅れそうだ。
こうした中、新たな景気下振れリスクとして、中国の武漢市で発生した新型肺炎の流行が挙げられる。中国では、一部で工場の稼働が停止するなど経済活動に支障を来している。中国の生産活動の下振れがサプライチェーンの混乱を招くとの懸念も広がっている。
国内の生産活動へのマイナス影響については、中国から輸入する製品を国内や他のアジア諸国で代替生産する動きもあり、現時点では限定的と判断している。
一方、年間5兆円近くに上るインバウンド需要は大きな影響を受ける。既に消費額の4割弱を占める中国人観光客が大幅に減少している。他の地域からの観光客も減少が見込まれており、日本経済に無視できない影響を与えそうだ。
さらに、国内でも感染が広がれば、家計の消費行動と企業の生産活動が制限されるため、景気の大幅な失速は避けられない。日本経済は、景気回復を維持できるかどうかの正念場を迎えている。
(日本総合研究所 調査部 副主任研究員 村瀬拓人)