円高を心配するよりも、円高が進まなくなったことを心配すべきではないか(写真はイメージです) Photo:PIXTA

 日本では円高を心配する意見が根強い。しかし、日米金利差の縮小を背景に円高が進むのではないかという懸念に反して、ドル円レートは110円近辺で安定的に推移している。巨額の貿易黒字を計上し、貿易摩擦を伴った円高圧力が続いていたのは過去の話だ。プラザ合意以降の円高の潮流は2012年初めで終わったのではないか。

 中国など新興国の競争力が高まる中、日本の競争力は低下している。貿易黒字を稼ぐ強い国ではなくなった日本の円は、日米金利差が縮小したからといっても購入する魅力が薄れている。安全通貨としての円買いも同様だ。円高の心配をするよりも、円高が進まないことを心配すべきだろう。

「円高は悪」という常識は
今でも根強く生きている

 デフレと並んで日本で嫌われているのは円高だ。戦後の日本経済の成長エンジンになったのは輸出であったが、円高は日本製品を割高にして輸出競争力を低下させる。競争力が高く、輸出超過になる国の通貨が強くなっていくのは、ある意味自然な成り行きだが、それでも円高は決して許してはいけない悪いことであった。

 円高が進んでくると、大変だと国を挙げての騒ぎとなり、官民一体となって日銀に金融緩和を強いる。最近でこそデフレ脱却が、日銀に金融緩和を迫るスローガンの代表格となったが、かつては円高阻止がその役割を担っていた。「円高は悪」という常識は今でも根強く生きており、金融・経済政策にも影響を及ぼしてくる。しかし、そもそも円高が進まなくなっているのではないか。