【社説】ジャック・ウェルチ氏が再建したGEGEのウェルチ元CEO(ニューヨーク市の自宅で2015年3月撮影) Photo:Andrew Spear for The Wall Street Journal

 ジャック・ウェルチ氏が米複合企業ゼネラル・エレクトリック(GE)で働き始めた1960年には、同社は既に創業から70年を経た巨大組織だった。こうした老舗企業を20年間経営し、今なら主に新興企業を連想させるレベルの活性化を成し遂げたことは、彼の経営者としての才能を証明するものだ。

 こうした成果は、 1日に84歳で死去したウェルチ氏が1981年にGE史上最年少の最高経営責任者(CEO)となった時点では、何も保証されていなかった。当時、米国の企業は1970年代のオイルショックとスタグフレーションの苦境を経験していた。そして国際的な貿易と競争の新時代がGEのような製造分野の巨大企業に打撃を及ぼし始めていた。中国が世界経済に再参入し、インターネットが普及し始めたことで、こうした課題はさらに深刻化した。米国の多くの大企業はこうした圧力の中で生き残れなかったり、規模の縮小を余儀なくされて苦しんだりした。

 ウェルチ氏のGEは、どんどん力を増した。彼は従業員と事業投資から生産性を絞り出すことに注力した。毎年、成績の下位10%にあたる従業員を解雇していたことは有名だ。また合併・買収(M&A)案件に絶えず関わり、不振の部門を売却する一方で、生産的な企業を買収した。彼が引退したときの年間売上高は、1980年の270億ドルから1300億ドル(現在のレートで約14兆円)にまで増えていた。ウェルチ氏の成功は他のCEOのモデルとなり基準となった。

 これら全ては、昨今はやりの単語を使えば、GEの「ステークホルダー」に大きな恩恵をもたらした。年金基金を通じてGE株を保有していた何百万人もの米国人は、同社の時価総額が140億ドルから4100億ドルに増えるのを目にした。消費者は、新たな製品やプロセスに対する同社の持続的な投資から恩恵を受けた。GEの従業員は新たな機会と、成功した企業で働くことによる経済的安定を得た。

 当然のことながらウェルチ氏は余人をもって代えがたい人物であり、彼が抜てきした後継者のジェフリー・イメルト氏はさほどの成功を収めなかった。現在はやりの論調は、ウェルチ氏の成功の大半はGEキャピタルに基づくものであり、その成長は別の分野の問題点を隠しており、2008年の金融危機で打撃を受けることになった、というものだ。しかしウェルチ氏の後継者たちは、金融危機が発生するまでの間、環境の変化に対応する時間的余裕が何年もあったはずだ。彼らはウェルチ氏のような見識や適応性を欠いていた、と言うほうがより適切だろう。後継者たちの失敗によってGEの株主やステークホルダーが利益を得ることはなかった。

 最近の米企業社会では新興企業とその創業者を称賛することがはやっており、派手であればあるほど、もてはやされる。ウェルチ氏はオールドエコノミーの最も重要な部門を再生させた世代の人だった(最近亡くなったもう1人の巨人、リー・アイアコッカ氏も同様だ)。米国の繁栄には両方のタイプの創意工夫が必要だ。ウェルチ氏は、米国で最も偉大な企業のひとつを活性化するのに最適な時期に現れた最適な経営者だった。

(The Wall Street Journal/The Editorial Board)