バブル崩壊後、日本企業で当たり前のように使われる「選択と集中」という言葉。しかしそれは誤訳であり、その呪縛に平成の30年間あまりの長きにわたってとらわれているために日本企業は成長しないとフロンティア・マネジメントの松岡真宏代表取締役は主張する。このほど、『持たざる経営の虚実』(日本経済新聞出版社)を出版した松岡氏にその真意を聞いた。(ダイヤモンド・オンライン副編集長 田島靖久)
売り上げは伸びていないのに
利益は8割増の意味は
──今年1月に出版された書籍の中で、平成の30年あまり、日本の企業経営者の心を捉えて離さなかった「選択と集中」というスローガンの呪縛から解き放たれるべきだと主張されています。どういう意味なのでしょうか。
バブルが崩壊した平成元年を100として現在と比較すると、日本全体の経常利益は180まで増え、8割増になっています。つまり、平成の30年間で、企業の利益はものすごく出るようになっています。しかし売上高は100のままで変わらず、設備投資に至っては70まで減少しているのです。
つまり、業容を拡大させることによって売り上げを伸ばし、利益を出しているのではなく、バブル崩壊後、「持たざる経営」や「選択と集中」という掛け声の下に不採算事業や、遊休不動産を切り離し、必死に収益を改善させてきた「減量経営」をやり続けてきた結果なのです。