――筆者のジェラルド・F・サイブはWSJチーフコメンテーター
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ジョー・バイデン政権で、カマラ・ハリス氏が副大統領、マイケル・ブルームバーグ氏が財務長官、ピート・ブティジェッジ氏が国土安全保障省長官、トム・ステイヤー氏が気候変動担当責任者、アンドリュー・ヤン氏が商務長官か、あるいは数学と数字の特別代表のようなものに就任するのを想像することは難しくない。
一方、バーニー・サンダース政権のメンバーとして、大統領選へ向けた候補者選びで争ったこれらの人々が結束する図を想像することは、ほとんど不可能だ。
民主党が今直面している最も基本的な選択肢を表現すれば、つまりそういうことだ。多くの予備選が行われるスーパーチューズデーを目前に控え、バイデン氏がサウスカロライナ州の予備選で息を吹き返したことにそれが表れている。サンダース氏は、民主、共和両党の現行体制に本格的な戦いを挑み、革命を成し遂げると語る。バイデン氏は、ドナルド・トランプ大統領が現れる前には常態だったような冷静さと安定を取り戻すことを提案する。
では、2020年の民主党支持者が求めているのは、闘争を約束する人物と結束を約束する人物のどちらなのだろうか。
バイデン氏は、サウスカロライナ州予備選での圧勝を受けた2月29日夜のスピーチの中で、まさにこの通りの選択肢を示した。恐らくこのスピーチは、大統領候補としての彼の姿勢をこれまでで最も明確に打ち出したものだ。その内容は次の通りである。「勝利は、より多くの分裂や怒りの種をまくのではなく、米国を結束させることを意味する。それは、戦うことだけでなく、国の傷を癒やすことをも意味する。われわれはドナルド・トランプと共和党を倒さなければならない。しかしここで約束しよう。われわれが彼らのようにはなることはあり得ないと」
ある意味これは、予備選シーズンを通じてずっと民主党員の前に示されている選択肢だ。2016年にトランプ氏は、米国が怒りと反エスタブリッシュメントのムードに包まれていると判断。こうした怒りを認識し、それをあおり立てる反ユートピア的候補者が勝利すると考えた。
トランプ氏は正しかった。そして、サンダース氏は彼なりの方法で、党派的およびイデオロギー的分断の逆サイドから同じ計算を行っている。さらに、労働者階級の「エスタブリッシュメント」に対する怒りが、有権者の心の中でうごめいている感情であるとも推測し、多少のミレニアル世代の幻滅も加味している。
サンダース氏はトランプ氏と同様、指名獲得を目指している党に属しているかどうかさえはっきりしない存在であり、党指導部と争ったり、党指導部を疎遠にしたりすることをいとわない。トランプ氏とサンダース氏の立候補には、双方が認めるであろう以上に共通点が多い。