米大統領選民主党候補者本命候補失速で、混迷状態の様相を呈する民主党。写真は大統領予備討論で講演したバイデン氏(中央)とサンダース氏(右から2人目) Photo:Scott Olson/gettyimages

米国大統領選挙の候補者を選ぶ民主党の予備選挙で、本命視されていたバイデン前副大統領が失速している。中道派の絞り込みが遅れる一方で、世論調査ではリベラル派のサンダース上院議員が首位に躍り出た。バイデン氏の失速で漁夫の利を得るのは、いったい誰なのか。予備選挙の現状を分析する。(みずほ総合研究所調査本部 欧米調査部長 安井明彦)

誰もが「本命大敗」に
納得する不思議

「一旦データを忘れて、それぞれの候補者から受ける印象を、虚心坦懐に見つめ直すのが一番だ」

 アイオワ州、ニューハンプシャー州での予備選挙を終えて、民主党のハリー・リード前上院院内総務の元アドバイザーは、このように指摘した。2つの州で大敗したバイデン氏が、民主党の「本命候補」とされてきたことへの諫言である。

 誰もが認める本命候補だったバイデン氏の連敗は、意外感というよりも不思議な納得感をもって受け止められている。支持率や経歴など、データの上では明らかに本命候補だったバイデン氏だが、遊説先での演説や討論会でのパフォーマンス、さらには提示する政策などには、有権者を熱狂させる「何か」が欠けていた。バイデン氏本人に触れる機会が多かったアイオワ州やニューハンプシャー州の有権者は、誰もが感じていたと思われる欠陥を見逃さなかった。

 バイデン氏は、脱落の瀬戸際にある。「トランプ大統領に勝てる候補」としての評価は、雲散霧消しつつある。キニピアック大学の世論調査では、「トランプ大統領に勝てる候補は誰か」という問いにバイデン氏を挙げる割合が、アイオワ党員集会前の4割強から、党員集会後には20%台後半にまで急落した。

 黒人からの支持が高いバイデン氏は、2月22日のネバダ州に続き、黒人の比率が高い29日のサウスカロライナ州に再起をかけるが、そのサウスカロライナ州ですら、リベラル派のバーニー・サンダース上院議員が急速に追い上げている。