コンビニ搾取の連鎖_今は使われていない安原食品の工場倒産し、今は使われていない安原食品の工場。コンビニとの取引に振り回された結果経営が傾き、立て直せなかった Photo by Koyo Yamamoto

週刊ダイヤモンド3月7日号の第1特集『コンビニ搾取の連鎖』では、食品メーカーがコンビニ本部の犠牲になっている構図を詳報。その中から一部を抜粋してお送りする。コンビニと取引したことで経営が悪化した二つの食品メーカーが金沢市にある。共にコンビニとの取引をやめる決断をするが、その後の明暗はくっきりと分かれた。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)

金沢市の老舗製麺業者が倒産
契機はコンビニとの取引だった

 石川県金沢市に本社を置く安原食品。コンビニとの取引に振り回された揚げ句、2019年7月に倒産してしまった。

 同社は1927年創業の老舗製麺業者だ。主にうどんや焼きそば用麺などを製造し、商品は県内のスーパーやコンビニなどで販売されていた。一時は県内の製麺類のシェアで40%を超えるほどの隆盛を誇った。

 県民にとってはおなじみの商品で、地元のタクシー運転手は「スーパーに行けば置いてあったし、昔からよく食べていた」と倒産を惜しむ。

 同社は事業拡大を目指し、石川県で圧倒的な店舗数を誇っていたサークルKサンクス(当時、CKS)と90年代から取引を開始。冷やし麺などを卸すようになる。

 5億円前後だった売上高は右肩上がりで、ピーク時の01年には約9億2500万円までになった。勢いを維持すべく、04年にはCKS向けの設備に1億円近くを投じた。

 ところが、急成長は続かなかった。巨額の設備投資もむなしく、徐々にCKS向け商品の受注が減少していく。取引条件も悪く、経営を圧迫する“お荷物”になっていった。ある時、CKSから増産の依頼を受けたが、これ以上の対応は困難と判断。取引そのものをやめることにした。