だが、すでに手遅れだった。その後は一時、債務超過に陥るなど資金繰りが逼迫。同業者との価格競争に打ち勝つ体力はなかった。

 小売店に対して、原材料の高騰を理由に値上げを要求しても、首を縦に振ってもらえることはなかった。うどんや焼きそばなどの麺類は、スーパーの特売品にされることが多いため、値上げは受け入れられにくい。負の連鎖を断ち切れず、ついに倒産に追い込まれたのだった。

コンビニ取引撤退で経営悪化から復活
カギは「高付加価値化」だった

 一方、コンビニとの取引からいち早く手を引き、生き残った企業も存在する。安原食品と同じく、金沢市に本社を置くローランド金沢だ。ロールケーキやチーズケーキなどの洋菓子の製造販売を手掛けている。

 かつて同社は洋菓子の他にも、パンを製造していた。その主な取引先もまた、CKSだった。09年には安原食品と同様、CKSからの受注に対応した設備投資をすべく1億円の借り入れをしている。

 だが、この投資は安原食品と同様に不発に終わった。CKS向けは単価が低い上に、24時間営業に合わせた対応も求められる。そして、CKSからの受注数は縮小していき、経営が大幅に悪化した。

 そこで14年に、CKSとの取引からの撤退を決断。洋菓子製造事業に経営資源を集中させた。14年までは大幅な赤字が続いていたが、直近の5年間は黒字体質を取り戻している。

 コンビニとの取引をやめた後、金沢市の2社の明暗を分けたのは、価格競争に巻き込まれない経営にかじを切れたかどうかだった。

 ローランド金沢は洋菓子事業に集中して以降、売上高そのものはコンビニとの取引があった頃よりも減少したが、利益率は大幅に改善した。自社ブランドを生かしたロールケーキ「金沢百万石ロール」など、付加価値の高い商品を強化する戦略が当たった。

 コンビニとの取引はロットが大きく、売上高を大きく増やすことができる。

 その半面、24時間営業への対応を強いられるなど運用コストがかさみ、利益を出しにくい。コンビニの再編が進んだ結果、本部の条件を満たせる大手に取引先を集約させる傾向もある。

 地域密着でブランドを生かしたローランド金沢の戦略に、メーカーが生き残るヒントがありそうだ。