このように、パンデミックという言葉を使うことには細心の注意と覚悟がいると説明している。これは、「今はパンデミックと定義するまでの状況ではない」と、遠回しに述べることを意図したのではないだろうか。

 さらに「コロナウイルスによるパンデミックが起こったことはこれまではなく、今回がコロナウイルスによって起こる初めてのパンデミックだ。そして同時に、私たちはパンデミックが制御可能だった経験はない」と続けている。

 これによって、パンデミックと呼ぶには「制御不能な状態」になければならないと定義づけられる。

 こうした言葉の後にテドロス事務局長は「今回がコロナウイルスによって起こる初めてのパンデミックになる(This is the first pandemic caused by a coronavirus.)」と発言した。

 これは、「今はパンデミックである」ととることもできるが、もっと厳密に言えば、コロナウイルスが制御可能なものから制御不能になる過渡期にある、つまり「今はパンデミックになりつつある途中にある」ともとれる。

テドロス事務局長の
発言の狙いは何か

 なぜテドロス事務局長のこのような複雑な言い回しを多用したのか。

 その理由は、会見での次の言葉で明らかになる。

「114カ国11万8000人の患者のうち、90%以上が4カ国に集中しており、そのうち中国と韓国の2カ国では罹患数が有意に下がっている」

 ここでいう「患者の90%以上が集中する4カ国」とは中国、韓国、イラン、イタリアである。