正月休みは3カ月延期
ネオン街から光が消えた
「入場客にはアルコール消毒を義務づけるなど衛生管理もしっかりしてきたのに、問答無用で営業差し止め。こんなことができるのは政権が軍主導だから。現場の努力をよく見てから判断してほしかった」
こう憤って話すのは、タイ・バンコク屈指の歓楽街「ソイ・カウボーイ」で酒場を経営するブンさん(仮名、以下同)。一斉に始まった歓楽街の営業自粛要請でやむなく臨時休業した一店舗だ。
「自粛要請」と言えば通りは良いが、ブンさんによれば“別件”での摘発をチラつかされての事実上の強制封鎖だった。当面の休業は月末までの2週間とするが、「その先の確証はない」と最悪の場合は閉店も覚悟する。
店が強制的に閉められたのは、反タクシンデモが高じて起こった2014年の軍事クーデター以来のことという。自らに非のないこともあって憤まんやるかたない思いでいる。
新型コロナウイルスの感染拡大は7万人超の日本人が暮らす東南アジア・タイの日本人社会にも色濃く影を落としている。
多くの観光客らが「水掛け祭り」を楽しみにしているタイ旧正月の「ソンクラン」は日程(4月13~15日)を7月以降に延期することが決まったうえ、3月18日からは映画館やパブ、バーなどの娯楽店、マッサージ・スパ店、日系を含む語学学校や学習塾が一斉閉鎖された。
すでにコンサートや展示会といった各種イベントの自粛はほぼ徹底されており、街の人影はすっかりまばらだ。
それに加えて今現地で暮らす日本人たちが最も気にしているのが、いつ日本に帰国できるのかというタイミングだ。航空会社が日本路線の運航を軒並み休止としたほか、日タイ両国が水際での感染防止のため入国後の強制的な隔離を準備しているためだ。
折しも毎年3月末から4月初めにかけては、海外駐在員の定期異動や一時帰国時期。「日本に帰れない!」――悲痛の叫びが広がっている。