新宿や銀座、浅草、アメ横に秋葉原…近年のインバウンドバブルで外国人、とりわけ消費意欲旺盛な中国人観光客に支えられてきた観光地に異変が起きている。新型肺炎拡大によって中国からの団体旅行客が途絶えたのだ。客数がガタッと減ったと嘆く人もいる中、「ようやく落ちついて訪問できるようになった」と話す日本人客もいる。(取材・文・写真/ジャーナリスト 姫田小夏)
新宿や銀座から
中国人観光客が消えた
日本で中国からの団体旅行客の姿が消えた。新型肺炎の拡大の影響で、中国政府が1月25日、中国からの団体旅行の海外渡航を禁止したためだ。
2019年に訪れた訪日外国人観光客は3188万人、そのうち中国人観光客は約3割を占める。東京は日本で最も外国人観光客が集中する都市だが、中国人観光客の減少で街の風景にも変化が現れていた2月15日の土曜日、筆者は都内の主な観光地を回った。
新宿・歌舞伎町は相変わらずの人込みだった。ゴジラヘッドのある新宿東宝ビルやディスカウントストアのドン・キホーテ界隈には、外国人観光客も多い。だが、明らかに異なるのは、中国語が聞こえてこなくなったことだ。つい最近まで、靖国通りは中国人観光客を乗降させる観光バスが何台も縦列駐車していたが、今では1台もない。
銀座はインバウンドで客層をガラリと変えた街のひとつだ。かつて銀座を支えた文化人は高齢化し、入れ替わるように増えたのが中国からの観光客だった。銀座四丁目交差点の界隈は、百貨店を中心に中国人向けサービスを充実させる店舗が増え、いつ訪れても中国人観光客が多かった。
その銀座でも、中国人観光客は姿を消していた。日曜日の歩行者天国も、銀座四丁目交差点界隈を除けば「人はまばら」という感じだった。
最も変化が現れていたのが、資生堂の化粧品専門店だ。筆者が訪れたとき、店内にはひとりの客もいなかった。この店は“中国人観光客の聖地”ともいえ、爆買いブームのときは、客の大量購入で店内には電卓をたたく音が響き渡っていた。ここ1年、爆買い客は引き潮となったが、それでも店頭では1本数万円もする高額な化粧品が売れていた。