コロナ禍のフランスで、危機が人の心を温かくしている写真はイメージです Photo:Xavier Laine/gettyimages

イタリア、スペインに続き、全国で外出と移動を厳しく制限する新型コロナ封じ込め策に転じたフランス。社会全体で不安と緊張が高まると同時に、人としての優しさや温もりを感じる行動や光景も目立ってきました。(Nagata Global Partners代表パートナー、フランス国立東洋言語文化学院非常勤講師 永田公彦)

老人と小学生の心和む会話

 3月16日(月)から始まった全国の学校閉鎖。その直前の13日(金)に筆者は、在仏生活23年で初めて見る光景に出くわしました。

 行きつけのミニスーパーでレジでの出来事です。筆者の前には、学校帰りの小学校4~5年生と思われる男の子3人と付添いの女性1人、その前には高齢の男性が並んでいます。小学生の手には、キンダーチョコとお小遣いと思われる封筒に入った紙幣、付添い女性の手には3人が授業で作ったと思われる創作物3点。

 すると老人が小学生に「学校は今日が最後だね。今度はいつ始まるんだい?」。小学生が「3週間後だと思う」と答えると、老人は「その作品は君たちが作ったのかい?」と尋ねます。「そうだよ」と小学生が答えると、老人が「これをみんなで分けて好きなもの買いなさい」と、10ユーロ紙幣を小学生に差し出しました。

 フランスでは、物乞いやストリートパフォーマーにお金を渡す光景は日常茶飯事です。ただ、見知らぬ相手に(たとえ子どもであれ)お金を渡すのは、めったにないこと。それもあってか、小学生も受け取るのをためらい、付添いの女性も奇妙な目で老人を見ています。